バランス計の製作 3

組み立ての後編です。(使用している写真は塗装前の仮組み段階のものです)


アーム部
シャフトの取り付け
まず、アーム部の組み立てから行います。鉄棒から切り出したシャフトをアームに接着します。
接着剤は、強度面を考慮して2液性のエポキシ系接着剤を使用しました。乾燥時間の短い 30分 タイプです。(この部分以外は木工用のボンドを使いました)

接着の際はシャフトがアームに対して直角になるよう、定規などで確認しながら接着してください。2方向の直角を同時に出すのは難しいかもしれませんが、精度に影響しやすい部分なので注意深く行ってください。(私は写真のようなV溝付きのマグネット工具を使用しました。どこの家にもあるという工具ではないので、ちょっと反則かもしれません 汗)



アーム右側部
 アームの切り欠き部に開けた穴にはタップビスをねじ込みます。このビスの先端が重量計を動作させるピンになります。この先端とシャフト中心との距離は126mmです。もし、ずれてしまった場合は先端を削るなどして調整してください。(ここの距離は126±0.5mm以内に収めたいところです)
 重量計の上皿がプラスチックの製品の場合、皿に穴(キズ)があく可能性があるのでビスの先端を丸めておくと良いと思います。
 次にシャフトのサポート部をアーム上に取り付けます。位置は支点からサポート中央部までが50mmの位置です。下の写真は塗装前の仮組みなのでサポート部の取り付けは両面テープで行っています。
寸法線がきちんと書けていません(シャフト中心になっていない) 予めご了承ください。



アーム左側
・アームの左側にクラブのストッパーを取り付けます。取り付け位置はシャフト中央から 14インチ +グリップエンド分の長さ(厚さ)を加えた長さ(357.5mm)にします。ここでは接着剤は使わずにタップビスでの仮止めとし、最後の工程である塗装の後に固定するようにしました。



尚、グリップエンド分の長さをどの程度にするかで、計測されるバランス値が変わってきます。私の持っている4種類のバランス計で確認した所、各社まちまちな長さになっていました。特に決まりはないようです。
グリップエンドの凸部の長さ(高さ)と形状はグリップメーカーやモデルによって違うので、中間的な長さにするのが無難だと思います。今回はグリップエンド分として1.9mmにしました。支点の中央からは 357.5mm(14インチ +1.9mm)の長さです。
グリップエンド分を1.9mmより多くするとバランス値は軽めに、1.9mmより少ない場合は重めのバランス値になります。現在、使用しているグリップに合わせるのも良い方法かと思います。


アームポスト(支柱)
次に、アームポストを組み立てます。この時に、アームを組み込んでしまう方法もありますが、今回は、後でアームの交換ができるよう、片側は接着せずにタップビスで固定するようにしました。
30 X 50 mm の板2枚を T字型に接着し、その一端にアームポストを接着します。
接着剤が乾燥したら、もう一方のアームポスト用の穴を開けます。位置がずれないように注意してください。
最後にアームの支点であるシャフトを保持するベアリングを取り付けて完了です。




アームポストをベースの板に接着します。接着する位置は、アームがベース板からはみ出ない位置であれば適当なところで大丈夫かと思います。 (ベースの板は大きめで余裕があります)



重量計をのせる台を組み立てます。台の高さは45mmにしてあります。使用する重量計に合わせた高さが必要になりますので、ご注意ください。多少の誤差はアームのPINの長さで調整可能です。
この段階ではベースの板と台は固定しないでおきます。(塗装後に固定)



以上でバランス計の形になりました。アームを手で上下させてスムーズに動けばOKです。





重量調整用パーツの取り付け
次にアームの重量調整のパーツを取り付けていきます。まず、アーム下部にヒートンを取り付けます。スタッドボルトよりも30mm程度狭い幅で取り付けてください。位置は図を参考に適当な所で構いません。
この2つのヒートンに写真のようにナット2とナット1を取り付けたスタッドボルトを通します。両側をナット1で固定してください。
調整用のナット2は中央付近にセットしておいてください。






鉄板の取り付け準備
現在の状態でのアームの重量を確認します。方法は写真の位置に重量計をセットします。測定位置はアームの左側の位置です。画鋲の先がアーム支点中央から14インチの位置になるようにして行います。アームがほぼ水平の位置で測定できるように重量計の高さを調整してください。



この状態ではアームの重量が足りないはずです。最終的に得たいアームの重量は A0 に対応するおもりの重量である 326g (正確には326.03g) です。測定された重量の不足分を、用意した鉄板を貼り付けて補います。
必要な重量分を切り出しアームの両側に取り付けます。
鉄板を取り付ける位置を確定するために両面テープを使って場所を移動させながら行いました。
 仮止め > 測定 > 移動 > 測定 > 移動 と何度か繰り返して、丁度いい場所を探しました。
最終的な調整はナット2の固定位置を調整して行いますので、この段階では 326 ±20g 程度であればOKです。
(注)画鋲の重さは、予め重量計側で風袋として補正しておかないと誤差になりますのでご注意ください。次の手順でも同様です。



鉄板の取り付け位置が決まりましたら、ナット2を調整して左側アームの重量を 326g に調整します。
ナット2をダブルナットの要領でロックした位置で、ピッタリ 326g になるようにします。
何度か測定を繰り返して誤差が出ない事を確認してください。重量計の公差以内であればOKです。



以上で完成です。動作チェックを行ってください。何本かのクラブを測定してみて、計算で求めたバランス値と比較し ±0.5ポイント以内であれば実用上問題のない範囲だと思います。大きくバラツク場合は原因を探してください。

チェックが完了したら、後はお好みの色に塗装してください。
塗料の種類は木材用のものから適当にお選びください。ラッカー系は乾燥時間が短く、ペイント系は乾燥時間が長くなります。下地処理を行うと、より美しく仕上がると思います。レタリングシートやデカールを付ければ更に見栄えが良くなります(笑)

尚、塗装した後はアームの重量が変化しますので上記の手順で再度、アームの重量調整を行ってください。

@塗装前の状態はこのようになりました。色を塗れば意外と見られるかも?という気がします(笑)。ボルトナットが何となくメカっぽく感じませんか???



塗装後の写真です。 9/12
色は黒を選びました。塗装は刷毛塗りで行いました。写真では塗りむらが写っていませんが、あまり良い出来ではありません。完成写真を撮るのを急いだ関係で、目止めなどの下地調整をを行わなかったためです。美しく仕上げたい場合はしっかりと目止めを行ったほうがいいです。特に切断面は塗料を吸ってしまい、ちょっと悲惨な状態になってしまいました(汗)

尚、手順には書いてありませんが、アームのホームポジション用のストッパーをアーム右下のベース板上に取り付けました。丸印の部分です。余った木片を両面テープで適当に貼り付けてあります。(326g 調整時に邪魔になるため)




動作概要

 このバランス計はバランス値 A0 を基準に作られています。基準となる A0 のバランスを持つクラブを図示すると、このような状態です。



 A0 のインチオンス値は 161 ですので、グリップエンド側に付けるおもりの重量は 326.03g(11.5オンス) で水平に吊り合うことになります。(インチオンスについてはこちらのページを参照してください


 これと同じ状態にするために、バランス計のアーム左側 14インチの位置を 326g にセットしました。製作手順を参照ください。(小数部は切り捨て 326g)



 バランス計で A0 のクラブを測定すると、アームとクラブは吊り合いますので、重量計には重さがかかりません。
したがってはかりは 0g になります。




A0 よりも重いクラブの場合は、ヘッド側の重みでアームが右側に回転しようとして傾きます。この時に傾いた分の重量を計測することでバランスとして測定します。例として B0 のクラブを測定したときの図をご覧下さい。



 B0 のクラブを吊り合わせるには 35.43g 不足してますので、アームが右側に傾きます。不足分の重量はアームの右側に置いた はかりの上にかかります。この例では 10ポイント分の 100g になります。
(1ポイントが 10g になります)

 アーム側14インチ部の 35.43g の不足重量を はかり側のアームで 100g に変換していることになります。
変換のロジックは次のように行っています。

まず、10ポイント分のインチオンスの値は

 B0 のインチオンス値 - A0 のインチオンス値 = 17.5 インチオンス

になります。単位がインチオンスだと計算が面倒なので mm・グラムに換算します。

 17.5インチオンす × 25.4mm × 28.35g = 12601.575 mm・g 

この値を右側のアームで 100gに変換するには

 100g × 支点からの距離 = 12601.575 mm・g ですので、

 支点からの距離 = 12601.575 ÷ 100 = 126.01575 mm

したがって、支点から 約126mm の位置をはかりで計量すれば、10ポイント分を 100g のバランス値にすることができます。

100g = 10ポイント
10g  = 1ポイント
1g   = 0.1ポイント   詳しくは前回のページを参照ください

ちなみに、上図の説明に出てきた不足重量 35.43g は、インチオンス値から 14インチ分を除算すると求めることができます。

 17.5インチオンス ÷ 14インチ = 1.25 オンス
(グラムに換算すると 1.25オンス × 28.35 = 35.43g)

動作そのものは簡単なのですが、とてもよく考えられているなぁと感心してしまいます。


使用上の注意点(利点・欠点など)
 このバランス計の注意点をご紹介しておきます。どんな計測器にも付きものの誤差の話です。

最大の欠点は図のように、重量計の上皿が動くのと同時にアームも傾くことです。その為、シャフト上の14インチ位置が変化してしまい、僅かですが誤差となります。



 この14インチ位置のズレの度合いは重量計の上皿が上下する範囲次第ということになります。
カモシタのオリジナルは 上皿バネばかり なので、このストローク幅が比較的 大きいです。しかし、このバランス計の場合はデジタルはかりなので、ストローク幅はとても少なく、誤差はかなり緩和されます。(誤差がなくなる訳ではありません)

 誤差を少なくする方法としては、常時使用するバランス値の付近でクラブが水平になるように調整することです。調整方法は、はかりを押すためのピン(タップビス)の長さを調整することで行えます。また、重量計の台の高さを調整することでも行えます。(この場合、台を少しだけ低めに作っておき、後でシムなどで高さを調整すると良いと思います)

 アーム上に水準器を設置して常に水平位置で測定できるように、ピンの高さやはかりの高さを調整できるような機構があれば、この欠点は大幅に改善します。もし、徹底的にこだわりたい場合は、このような機構を付けるものいいかもしれません。さらにシャフトの高さ調整機構をつければあらゆるシャフトのテーパーに対応できます。

 ちなみに天秤型 のバランス計の場合は、常に水平の位置で計測をするので、この欠点はありません。精度の上では有利な構造になります。しかし、スケール上の狭い幅に刻まれた目盛りを読む必要がありますので、目盛りの中間の値での読み取り誤差が大きくなる傾向があります。
 読み取り誤差というのは意外と大きいので、このバランス計が持つ支点のズレによる誤差程度であれば相殺できると考えられます。

 デジタルで読めるというのは微調整の際など、大きなメリットになりますので、トータルとしては良い方式だと思います。

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 以上、長々とスイングバランスについて紹介してまいりました。
通してお読みになった方は、当店がさぞかしバランスに拘っているかのように感じたかもしれません。
しかし、実はまったく逆で、バランスには拘らないという事に拘っている(笑) というのが当店の実態です。

 そもそも、バランス理論が考え出されたのは、異なるクラブをいかに同じフィーリングにするかという点からです。
使う人にとってのフィーリングですので、その感覚は様々なはずです。バランス値は XX が良いというものではありません。
 また、現在のようにシャフトやヘッド、グリップなど非常にバラエティに富んだ部品が組み合わされてクラブになり、さらにそれら1本1本が集まってセットとして組み合わされるので、数字を揃える事自体には意味が薄くなっていると感じています。

・・・とはいえ、おろそかに出来ないのがスイングバランスだと思っています。
道は長いですが、そこそこのクラブ作りのために、今後もいろいろ考えながら試行錯誤していく予定です。


次回は、スイングバランスよりも優れている可能性を持つバランスメソッドである MOIマッチング についてご紹介したいと思います。

2008-9-7
2008-9-10 追記