12インチ方式スイングバランス

今回はもう一つのスイングバランスメソッドである12インチ方式を紹介します。

最初に前回までの14インチ方式との違いを表にしたのでご覧下さい。

    12インチ 14インチ
支点の位置 グリップエンドから12インチ グリップエンドから14インチ
バランス計の
スケール
オンス
(日本式の12インチ計はダイレクトリーディングA0〜F9 )
初期はインチオンス。後に
ダイレクトリーディング
(A0〜H0)
D0時のバランスウェイト重量
(おもりの重量)
20オンス 15.25オンス
ウッドクラブとアイアンクラブの違い ウッドとアイアンで2ポイント異なる ウッドとアイアンに違いはない

1)
 名前からも解るとおり、最大の違いは支点の位置です。
14インチ方式がグリップエンドから14インチの位置を支点にするのに対して、手元側に2インチ移動させた12インチの位置が支点になります。

2)
 バランス計のスケール上の目盛りが異なります。初期の14インチ計は、おもりの重量と支点までの距離(インチ)を乗じた インチオンス の目盛りが採用されていました。後に、現在と同じ A0〜H9までのダイレクトリーディングが採用されています。(Lorythmic Swingweight Scale 以降)
 それに対して、12インチ計ではおもりの重量を読み取ります。ABCD方式に対応させるには、換算表を参照して値を求めます。換算表はこちらをクリック
(注 日本国内の12インチ計は、オリジナルを改良し独特に進化しました。違いについては後述します)

3)
 支点の位置が異なるので、バランスを取る為のおもりの量が違います。
14インチ方式 D0 の場合は 15.25オンス(432.34g)。
12インチ方式 D0 の場合は 20オンス(567g)が必要になります。

4)
 12インチ方式は、ウッドとアイアンのバランス値が2ポイント異なります。ウッドのおもりの重量に対して2ポイント分増加させた重量がアイアンのおもり重量になります。具体的にはウッドで D0 に必要なおもりの重量 20オンス に対して、アイアンの D0 は、20.35オンスの重量が必要になります。


以上のように、様々な違いがあります。これらの違いにより、出来上がったクラブは、かなり異なったものになります。具体的に、どのように違うのかを例を使ってご説明します。

    ☆   ☆   ☆

14インチ方式の D 0.0 の2本のクラブを12インチ方式で計算すると次のようになります。
(注)ウッドクラブとして計算しています。

重量 バランスポイント 14インチ方式 12インチ方式
340g  31 13/16インチ D 0.0 C 8.8
290g  34 7/8インチ D 0.0 C 6.9

2インチ(約5cm)の距離とおもりの重さの違いが生む面白い現象です。14インチ方式では同じバランスにもかかわらず、12インチ方式だと異なるバランスになります。


逆のケースを見てみましょう。次の2本は12インチ方式 D 0.0 のクラブです。

重量 バランスポイント 12インチ方式 14インチ方式
339.8g  32 1/32インチ D 0.0 D 1.5
289.7g  35 1/2インチ D 0.0 D 3.5


 12インチ方式と14インチ方式で作られたクラブは、表記上は同じ D0.0 でも、実際のクラブはかなり異なったものになる事が、ご理解頂けると思います。実際、それぞれの方式で組み立てたセットは、異なるフィーリングのセットになります。どちらが良いとか、悪いというものではありませんが、個人的には12インチ方式のフィーリングが好みです。


アイアンの例もご紹介します。このアイアンセットは実物の測定値になります。上記の計算で求めた数値とは若干誤差があります。(計測器誤差) 測定計器は12インチ方式=マツダ計。14インチ方式は鴨下のバランス計をデジタル形式に改造したもので測定してあります。

番手 14インチ方式 12インチ方式 (注)
14インチ方式はデジタル値なので小数点の値になっています。
12インチ方式のバランス値は、アナログ値なので、スケールの目盛り幅の位置から +と− で表現しています。
D3- はD3 より僅かに少ない
D3+ はD3 以上 D3.5未満
D3++ は D3.5以上 D3.9未満 という意味です。


3 D3.4 D3-
4 D3.7 D3++
5 D3.2 D3
6 D3.4 D3+
7 D2.2 D3-
8 D2.4 D3
9 D2.0 D3+
P D1.4 D3++
A D1.8 D3+
S D1.8 D3+

このアイアンセットは、最初、14インチ計で測定した際、逆フローになっていたので、変だなと思い、12インチ方式で再度測定した時のデータです。
 アイアンはシャフトが同一でヘッドも同一デザインなので、ウッドよりも均質に番手フローしています。その為、12インチ方式と14インチ方式のセットの違いが、より際立ってきます。
(比較のために Official Swingweight Scale (オリジナル12インチ計)でも測定してみたいのですが、入手が困難なので実現していません。)


ここまで読んで、「あれっ?」と思った人がいるのではないでしょうか? 特に20年以上ゴルフをやっている人で

「オレはずっと D0 のクラブを使い続けている」

なんていう人は要チェックです。バランス方式自体が変化してしまっているので、同じだと思っているバランスが、実は同じではないことになるからです。

 同様に、男性用の標準といわれているバランスは、かなり昔から D0 程度といわれてきました。バランスの計測方式が変わっているのに、昔からのセオリーが、今も現役でまかり通っています。このあたりは一考の余地があるのかもしれません。

    ☆   ☆   ☆

12インチ方式は古いのか?

 12インチ方式と14インチ方式の歴史的な背景を、ご紹介しておきます。誤解しているゴルファーが多いと思われる為です。(実は、私もPCSのテストを受験するまでは誤解していました)

 日本に初めて12インチ方式のバランス計が登場したのは戦後まもない頃、といわれています。その後、長い間、唯一のクラブ専用計測器として使われてきました。そして15年ほど前になり、当時、米国で主流になっていた14インチ計が日本でも発売になり普及したことで、現在では14インチ方式が主流になっています。
 この変遷から、後発である14インチ計の方が、新しい方式だと思っている人が多いのですが、歴史的には逆で、14インチ方式のほうが古いのです。

 14インチ方式が考え出されたのは 1920年代初頭といわれています。その後、1940年代になって、米国の Kenneth Smith 社が12インチ方式を発表(特許取得は1935年)しました。 したがって現在の状況は、古い14インチ計が復活した、と言ったほうが適切ということになります。

 米国でも事情は似ていて、長い間、12インチ方式が主流だったようです。その後、14インチ方式が標準化され普及したとされています。(日本より5〜8年ほど早い時期と推測できます)
 しかし、14インチ方式が標準化された後も、しばらくの間、プロゴルファーや工房関係の人々によって、12インチ方式は使われ続けたという記述があります。現在のように、完全に一本化されたのは、日本同様、比較的新しい時期といえそうです。

    ☆   ☆   ☆

 日本式12インチ計について

 日本にバランス計が紹介されたのは終戦後だそうです。
ケネススミス社の製品である Official Swingweight Scale (12インチ計) を忠実にコピーした製品が発売されたそうです。その後、マツダゴルフという会社から、独自の改造を施した12インチ計が開発・販売されました。
 この製品は非常に良く売れ、広く普及したそうです。(通称、マツダ計と呼ばれ、当時はほとんどの工房で、この12インチ計が使われていたようです。)
 よく売れた理由としては、ダイレクトリーディングが可能であった為だといわれています。

 オリジナルをそのままコピーした12インチ計の場合、スケールの目盛りから読み取ったオンス値をABCD方式のバランス値に換算します。その為には換算表を参照する必要がありました。マツダ計では目盛り上に ABCD 方式の目盛りが刻まれており、換算の必要がありません。そのお陰で、調整をする時などは大変便利です。マツダ計が普及した理由として、大いに納得できます。

 オリジナル12インチ計と異なる点がもう一つあります。その違いもオリジナルよりも優れていたように思えます。

 オリジナルではウッドとアイアン間に、2ポイントの差が設定されていました。マツダ計では、これを約1・2ポイントの差
(下記注)に変更してあります。変更した理由は定かではありませんが、 1.2ポイントの差にしたことにより、アイアンクラブの仕上がりのバランスがウッドに近くなります。12インチ計で組んだアイアンセットの場合、ウッドよりも重めに感じる傾向があるので、これを多少、和らげることができるようになります。



(注) 8/14 
・オリジナルとのポイント差が 1.5 ポイント と記述された文献がありますが、私が所有しているものでは、約1.2ポイント差ですので、現物の値を採用しました。
・文章の意味が逆になっていた可能性があるので、青字部分を訂正しました。


    ☆   ☆   ☆

 最後に、14インチ方式が主流になったと考えられる理由(推測)を列記しておきます。

 ・ダイレクトリーディングが可能
 ・ウッドとアイアンで同じバランス値を使える
 ・バランス調整の精度を高くできる(ポイント毎の変化量の細分化が可能)
 ・有名クラブ販売会社の多くが採用した
 ・12インチ方式の元祖である Kenneth Smith 社が14インチ方式に変更した

他にもあると思いますが、このあたりが主な理由だろうと考えています。
尚、バランス計の歴史には諸説あります。私が調べた範囲では、正確な年代や経緯は特定できませんでした。資料が残っていないのかも知れません。約90年ほど昔の話なので、現代とは違いのんびりしていたのではないでしょうか。

 以上、12インチ方式についてご紹介しました。繰り返しますが、どちらの方式が良いとか悪いという事ではありません。どちらの方式でもご自分に合うクラブにすることは可能です。それぞれに特徴がありいずれも良い物です。


 さて、次回は もう一度 バランス計の製作 にチャレンジしてみたいと思っています。
リベンジ企画 「実用バランス計の製作」 の予定です。市販の製品と比較して、精度の面で遜色のないものにしたいと思っています。(見た目は良くありません・・・汗)

ただいま、鋭意製作中です。あまり期待せずに、お待ちください♪

2008-8-13
2008-8-14 文章の一部修正と写真を追加しました。


おまけ (9/7 追記と一部訂正)
調査研究目的で手に入れた、古〜いバランス計です。
構造は至ってシンプルです。壊れるような部分がほとんどないので、現在でも使用可能な精度を保っています。
今後、暇な時にでもレストアをしたいと思っています。

12インチバランス計 (Official Swingweight Scale)

長年探していた Official Swingweight Scale です。やっと手に入れることができました。
外見はマツダ計とそっくりです。あたり前ですね(笑)
スケール目盛りは 0オンスから28オンスまでになっています。
0オンスというのは無負荷でアームが吊り合うということです。ちょっと考えると意味がなさそうですが、そうでもありません。シャフト単体でのバランス値が計れるからです。
慣性モーメントマッチングなどでは威力を発揮してくれるのではないかと期待できます。

手に入れて間もないので、今後、いろいろ測定しながら検証していきたいと思います。

14インチバランス計 (ロリスミック計)


14インチ計の元祖ともいえる Lorythmic Swingweight Scale です。
このモデルではダイレクトリーディングが可能になっています。A0〜H0

12インチバランス計 (マツダ計)

 独自の目盛りに改造されたマツダゴルフ社製の12インチ計です。主要な機構部分はオリジナルである、Official Swingweight Scale のコピーです。

(注) 9/7 訂正と加筆
以前の文章には 
<ネーミングが微妙に違う点が面白いです> と記述しましたが、オリジナルの12インチ計が手に入ったのでプレートを確認した所、同じネーミングである事が判明しました。(上記 Official Swingweight Scale 参照) したがって赤字部分を削除させていただきました。
また、下記赤字部の記述も、以下に述べる理由から訂正する必要があるかもしれません。

近年、日本製品を真似た外国製品の話題がいろいろありますが、50年前は日本も同じ事をやっていたことが窺える製品です。(笑)

オリジナルとマツダ計を並べて比較しました。コピーや模造品というにはあまりにも似すぎています。オリジナルは特許を取得しています。その上であえて、同じ形、名前で作ったという事を考えると、Kenneth Smith 社から特許の使用許諾を得ていた可能性があります。
マツダゴルフ社へ問い合わせて、事実関係を確認すればよいのですが、現在、会社が存在するのかどうかもわかりません。したがいまして、赤字の部分は間違いの恐れがあります。ご注意ください。

上が Official Swingweight Scale 下が マツダ計






14インチ計の Prolithmic Swingweight Scale を探しています。もし、現在お手持ちで、譲ってもよい、という方はご連絡をいただければ幸いです。