ゴルフクラブの工房をしていて、いつも不便に感じていることがあります。それはシャフトやグリップ、ヘッドなど各部のサイズを表す単位系が統一されていないことです。

シャフトのカタログを見ると、長さはインチ表示で記載されているのが普通です。しかし、シャフトの直径になるとmm表示で記載されることが多くなります。シャフト長、直径など、同じ種類の量を表しているにもかかわらず、異なる単位が使われるのは解りにくいものです。また勘違いの元にもなりやすいと感じています。(逆にイメージしやすいという人もいます)

私が困るだけであれば、たいした問題ではありませんが、お客様にとっても、よろしくない事が発生する可能性がありますので、今回はそのあたりの話を紹介させて頂きます。


英国や米国で発達してきたゴルフは、その伝統からヤードポンド法とよばれる単位系が使われています。ゴルフに関する数量値の多くや、クラブの仕様・設計も、この流れで作られています。ゴルフに深く関係するヤードポンド法ですが、どのような理由かは知りませんが、独特の位取りが使われます。

ホールの長さや残り距離、またボールの飛距離などはヤードが使われます。ヤードよりも詳細な距離の違いを表現することが必要なグリーン上の残り距離などは、1ヤードの1/3の単位であるフット(複数形でフィート)が使われます。もっと細かい長さの表現が必要なクラブなどでは1フットの1/12であるインチが使われます。ボールやクラブの重さは1ポンドの1/16を1単位としたオンスで表現されます。このようにヤードポンド法での単位の変化は、10進法の位取りに慣れている私にとって、とても解り難いものになっています。

日本ではMKS単位系を使うことが義務付けられている為、10進法ですっきりと位取りできるようになっています。しかし、ヤードポンド法で表現された量をMKS単位系に換算する必要があるので、もっとややこしくなります。中でも、特に不便に感じているのが1インチ未満の長さで使われる2種類の表し方です。分数を使う方法と小数点数を使う方法で、それぞれの換算ではとても苦労しています。


例として、輸入機械や自動車などを整備する時に使うインチサイズのスパナで使われている分数表示をご覧ください。

・5/8インチ
・19/32インチ
・9/16インチ

これでは、どれが小さいのか大きいのか、慣れないとすぐには判断できません。通分すれば、それぞれ 20/32 19/32 18/32 なので、私の頭でもなんとか理解することができます。

クラブの長さを測定する時に使うインチスケールは、この分数方式で作られています。その為、たとえば、現在のドライバーより0.4インチ短くしたいというような注文の時は困ります。 
 「0.4375インチか、0.375インチじゃだめですか?」 と変更のお願いをすることになり、お客様を驚かせてしまうことがあります。これはスケールがそのように(分数)なっている為です。けして、数字が好きで拘っている訳ではありません(笑)

さて、上記のスパナの分数を小数点数で表せば

・0.625
・0.59375
・0.5625   

と、通分などしなくても直感的に違いを理解できますが、ややこしい数字になってしまいます。

デジタルノギスなどはこの少数表示が使われています。目盛りを直読できるので、とても便利です。
幸いな事に、ゴルフのグリップサイズやシャフトの径は、少数点数で設計されるのが一般的なので、通分の必要もなく、わかり易くなっています。しかし、MKS単位であるmmが混在すると、途端にややこしくなります。



1.グリップサイズとシャフト径(Butt径 手元)

0.580 0.600 0.620 グリップサイズをあらわす内径の数字で、おなじみだと思います。

シャフトButt径は、これらの数字の中間の値が加わり

0.580 0.590 0.600 0.610 0.620 の太さで作られているシャフトが大多数です。

一般にグリップは、その内径サイズとシャフトのButt径を一致させると、標準の太さになるよに作られています。
具体的には 0.600サイズのグリップを0.600のシャフトに取り付けると、標準的な太さである 0.900インチになります。0.580のグリップを0.580のシャフトに取り付けても、標準の太さ(0.900インチ)になるように肉厚が考えられています。0.620同士の組み合わせも同様に0.900インチに仕上がります。このように、グリップの太さ(外径)を考える場合は、グリップ内径とシャフトの外径を知っておく必要があります。

シャフトのサイズに合ったグリップを探す場合、双方の表示がインチ表示であれば、間違いや勘違いは起こり難いのですが、日本のシャフトメーカーではシャフトの径をmmで表示するのが一般的です。

前述のシャフトサイズをmm表示にすると、

14.732mm  14.986mm  15.24mm   15.494mm   15.748mm

太さの違い自体は数字の大小で判別できても、その太さに対応するグリップを探そうとすると、すぐには選べないのではないでしょうか。小数点以下の数字は覚え難いし、四捨五入したくなるので、尚更です(笑)

これらのmm表示されたシャフト径とインチ表示されたグリップ内径の違いが原因と思われる問題が発生することがあります。
標準装着のグリップを、肉厚の580サイズのグリップに変更している場合などは特に注意が必要です。

シャフト交換の時に、「グリップは580サイズで!」 という注文を頂く事があります。その理由を尋ねてみると、

「今のグリップが580だから・・・」または、「太いグリップが好み」

ということが多いのですが、現在使用中のシャフト径が何インチ(または何mm)なのか?。また、交換後のシャフト径が何インチ(または何mm)なのかという事まで、考慮していらっしゃるお客様は少ないように感じています。

使用中のシャフト径と交換後のシャフト径が同一であれば良いのですが、異なるシャフトだったりすると、希望する太さとは、かけ離れたグリップサイズになってしまいます。

前述の通り、主なシャフトの太さは0.01インチきざみで5種類ほどあります。最も差の出る組み合わせとして考えられるのは、現在のシャフトが0.580インチで交換後のシャフトが0.620インチということになります。極端すぎると思うかもしれませんが、普通に起こりえる範囲です。

シャフト径 グリップ内径 グリップ外径
現状 0.580 0.580 0.900
交換後 0.620 0.580 0.940
0.04 0.04

シャフトサイズの違いである0.04インチの違いが、ほぼそのまま、グリップ外径の違いになります。(実際にはグリップの伸びがあるので0.001〜0.002インチ程度、差が狭くなります)

数字だけ見ると小数点以下の違いなので、大した違いがあるようには思えないかもしれません。この違いがどの程度かを紹介します。

当店での計測データでは、敏感な人がグリップを握った場合、 違う と感じるグリップの太さの差は、

0.005インチ です。

普通の人は、もう少し範囲が広く、

0.01インチ のほどの差で、その違いに気付きます。

これは、2本のサイズ違いのグリップを交互に握り比べた場合に感じる太さですので、かなりシビアな状態です。クラブをコースで使うような場合であれば、0.02インチ程度なら 気付きにくい または なんとか許容できる範囲 だということが解っています。

したがいまして、その2倍の差である0.04インチの違いというのが、どれほどの違いがご理解いただけるかと思います。グリップを握った瞬間に違和感を感じるほどの違いといえます。

適正なグリップサイズにするためには、シャフト径(Butt径)とグリップ内径がとても重要になることを、ご記憶ください。

「数字を覚えるのが面倒」という人は、「この太さで、たのむ!・・・」と、ご使用中のクラブを工房まで持参するのが良い方法だと思います。

(注)
・新興の日本産グリップの中には、標準とは異なる設計のグリップがあります。0.600サイズの表示でも、装着時の外径が0.930〜0.940ほどの太さになる製品もありますのでご注意ください。
・パターグリップの太さに関しては、上記の内容はあてはまりません。他のクラブとは一線を画すクラブであるパターならではと思います。尚、パターグリップの内径は0.580が一般的です。

グリップに関する話題はいろいろあるので、今後、あらためて紹介します。
次回は、続編としてヘッドとシャフト径について紹介させていただきます。

2008/5/12 Upload
2008/5/14 文の一部を訂正(単語、句読点、接続詞、冗長な表現など)